室原知幸さんのダムの本
                                水・河川・湖沼関係文献研究会   古賀 邦雄
 かってダムをテーマとした小説を福岡の古賀店に依頼した。石川達三の「日蔭の村」(新潮社・昭和12年)
三島由紀夫の「沈める瀧」(中央公論社・昭和30年)、井上靖の「満ちてくる潮」(昭和31年)の三冊である。
インターネットで検索したのか、4、5日で届き、便利になったと関心している。
 私の本棚に室原知幸著「下筌ダム−蜂之巣城騒動日記」(学風社・昭和31年)がある。この新書版を手
にとると舒文堂川島書店(熊本市)のマークが貼ってある。
 もうかなり以前のことだが、佐賀市坂田賛化堂を訪れたことがある。そのとき「なにをお探しですか」と尋ね
られた。「河やダムの本ですが」と答えた。店主は「ダムの本はあったのですがね、下筌ダム闘争のころ
室原知幸さんがなんでもいいから、ダムや河川の本をすぐ送れとと連絡があり、数箱段ボールで送ったこと
がありました。」と話された。
 昭和28年6月、梅雨前線の豪雨によって、筑後川流域に大水害をもたらした。この水害を防ぐためのダム
建設とその建設の是非を問うため室原知幸さん。国家と対峙するため河川理論について、これらの古書から
学ばれたのであろう。昭和45年下筌ダムは完成、すでに30年の歳月が過ぎた。
 なお、室原知幸さんのダム闘争を描いた杉野なおきの「蜂ノ巣城」(叡智社・昭和47年)、佐々木隆三の
「大将とわたし」(講談社・昭和51年)、松下竜一の「砦に拠る」(筑摩書房・昭和52年)の三冊の小説がある。
室原知幸さんが収集された書は、いまでは関西大学図書館室原文庫に収蔵されている。坂田賛化堂の古書
もこの文庫に含まれているはずだ。古書にもそれぞれの運命があるようだ。