水は命の源

水のことなどあれこれ

水のことなどあれこれ(1)

    ―あんぽんたんの川流れ て知っていますかー

 

  河川図書館を開館以来、いろんな方からいろんな質問が電話である。例えば、筑後川の源流はどこですか。水利権の資料はありますか。水道の水質基準でいまのアルミニュムの基準では、認知症は大丈夫ですか、というぐあいで、なかなか回答に苦慮することがある。

 

、先日、あんぽんたんの川流れって、どんなことですか。福岡県那珂川町の主婦から問い合わせがあった。ヒントは川と橋に関係するらしい。子供のころは親から、なにか失敗をすると、あんぽんたんが、馬鹿たれが、怒られたことことを思い出した。

 

 早速、土木学会編「橋のなんでも小事典」(講談社・1991年)、長嶋文雄・服部秀人・菊地敏男著「橋なぜなぜおもしろ読本」(山海堂・1998年)、村瀬佐太美著「日本の橋・石の橋」(山海堂・1999年)で、調べてみたが、あんぽんたんの川流れは掲載されていない。

 

旧知の国交省道路課担当の友人に聞いたところ、よくわからなくてとにかくパソコンで、調べてくれた。「橋桁の川上に設けられた杭、普段は役に立たない。転じて愚かなものという。」とパソコンに出てきたという。私も早速パソコン開くと、確かにあった。どうもイーメィジがわからない。何のための杭設置なのか。

 

 翌日、タマタマ大学の先生にお会いすることがあり、−あんぽんたんの川流れーって知っていますか。ワカリマセンとの回答であった。

 

 また、主婦からの電話であった。矢部川の黒木町に南仙橋という木の橋があるが、どうもその橋に設けられているらしいと。そこで八女市の矢部川と橋の研究をやっている人に、電話した。「あぁ、あんぽんたんの川流れは知っているよ。むかしは木の橋が多かった。橋桁の上流約1mほどのところに、木杭を打ち、それにつーかい棒をたてて、洪水の時などゴミを絡ませ、橋を守る、それをあんぽんたんの川流れという」と教えていただいた。

 

 やっとこれで、納得ができ、その主婦にすぐに報告した。南仙橋にはこの杭はいまは、ないそうである。どなたかこの杭が設置してあるところがご存知であれば、教えて下さい。また、杭の図や写真をお持ちの方は、ご連絡下さい。

 

   (2008年7月18日)
       古賀河川図書館 古賀邦雄  TEL&FAX 092−929−6407

 

 

水のことなどあれこれ(2)

 

            ー渡しとウナギ屋とフミヤー

  <土用鰻店ぢゅう水を流しけり> 阿波野青畝
 7月21日ごろから18日間は夏の土用であるが、丑の日(今年は24日)に鰻を食べると夏ばてしないという。鰻はビタミンA、ビタミンE、DHA、EPAなど豊富な滋養強壮効果が多い食べ物であるからであろう。また、福岡県筑紫野市二日市温泉御前湯では、丑湯まつりがあり、この丑の日に入浴すると、万病に効くといわれている。

 

筑後川沿いには鰻屋が繁盛している。有馬藩の殿様は鰻が大好きであった。JR久留米駅の近くに田中屋という有馬藩御用達の鰻屋がいまでもつづいており、いつも蒲焼の香が漂っている。
筑後川下流の久留米市大善寺町黒田に鰻専門店が数軒並んでおり、せいろ蒸しが名物である。かつてここには黒田の渡しがあった。渡しの客待ちの人たちに鰻をだしていたが、その後橋が架けられ、渡し舟は廃止となり、鰻屋は残った。このことは、筑後川河川事務所編・発行「筑後川大百科」(2003年)に載っている。
筑後川には62の渡しがあったという。1994年3月城島町の「下田の渡し」が消えた。これで筑後川の渡しが全て消えた。
渡しの書については、北井一夫・和田久士写真、大崎紀夫・文「渡し舟」(角川書店・1976年)、調まどか編「消えていく渡し船」(水の原社・1982年)、城島編・発行「下田の渡し」(1996年)がみられる。

 

7月の暑い日、久留米市原古賀町の鰻料理ふぢ井(電話0942−38−9828)に出かけた。路地裏にひっそりと佇む老舗で、紫の暖簾をくぐると、上品なご主人と奥さんが迎えてくれた。客はたまたま私一人だった。この店のオリジナルの丼という「鰻わさ丼」をたのんだ。タレのなかにネギのきざみと山葵と鰻の身がベストミックスされ、ピリッとした山葵と鰻の香りがなんともいえない。とにかく美味しかった。帰り際に「ふぢ井さんとあるが、フジイフミヤと関係があるのですか」と、聞いてみた。「はい、フミヤの祖父との親戚になります」と、返ってきた。
久留米出身はフジイフミヤをはじめ、松田聖子、田中麗奈が活躍している。その活躍のエネルギーは、おそらく3人とも子供のから筑後川沿いの鰻料理を食べていたからであろう。

 

     (H20.7.24) 古賀河川図書館    古賀邦雄

 

 

  水のことなどあれこれ(3)

 

     ―地図も集めておいたほうがよかばいー

 

 平成20年5月2日佐賀の水利慣行や成富兵庫などに、造詣の深い宮地米蔵先生(元福岡大学教授)が河川図書館に来館された。「ほう、だいぶ水利や河川の書が集まっとるばい。」「地図も集めておいたほうがよかばい。」と、いつものように目を細めて、笑顔でおしやった。「とくに、古い図を集めておきなさい。」と、念を押された。過去と現在を比較する時に、水や河川の流れがよく解かるという。

 

 地図に関する書をいくつか挙げてみたい。小野寺 淳著「近世河川絵図の研究」(古今書院・1991年)で、近世河川絵図の特色について、次のように分類する。
(1) 護岸堤を示した治水に関する河川絵図
(2) 堤外地の開発や所有を示した河川絵図
(3) 農業用水や上水に関する河川絵図
(4) 河川交通に関する河川絵図
(5) 地誌的な性格をもつ河川絵図
 そして、近世河川絵図が現存する北上川、最上川、阿武隈川、利根川の絵図計24点の史料とし、これらの絵図から絵図に携わった人の空間認識を解読している。

 

 ロビン・クラス、ジャネット・キング著、沖大幹監訳「水の世界地図」(丸善・2006年)には、あらゆる世界中の水問題について、ビジュアルに世界地図で示されている。汚れた水で年間170万人が死因となっていること。10億人以上の人が信頼できる水源を容易に利用出来ないこと。工業化された農法が収量増大のための農薬の利用によって水汚染がおこっていること等等。この書は自然の恵みの水は、無限でなく、有限であることをさまざまの角度から世界の地図上で表している。

 

 ところで、平成20年5月22日筑後川河川事務所から、九州を流れる筑後川、遠賀川、山国川、菊地川、大淀川などの流域立体図の寄贈をうけた。これらの地図をみた学生達は「いや、これはすごい、雨が降ったら何処へ流れるか一目瞭然だ。」と、感嘆。分水嶺については「日本の分水嶺―地図で旅する列島縦断6000キロ」(山と渓谷社・2000年)の書がある。このように河川を図から見てくると、次から次へと不思議な魅力が湧いてくる。最近は河川のゴミマップも出されている。今度宮地先生が来館された時は「こんな地図がありますよ」と、お見せしたいものだ。

 

        (H20.7.28) 古賀河川図書館   古賀邦雄